南オーストラリア州（South Australia）はオーストラリアの南部に位置し、農業とワイン生産が盛んな地域として知られています。

　その中でも、特に注目すべきエリアの一つがライムストーンコースト（Limestone Coast）です。この地域は、美しい自然環境と豊かな土壌に恵まれ、高品質の農産物とワインの生産地として世界的に評価されています。 

　ライムストーンコーストは、南オーストラリア州の南東部に位置し、州都アデレードから約350キロメートル離れた場所に広がっています。

　ライムストーンとは石灰石（石灰岩）を意味し、その名の通り、石灰岩の地層が広がり、肥沃な土壌と地下水系が存在するのが特徴です。気候は温帯であり、冷涼な海洋性気候が特徴です。これにより、農業やワイン生産に非常に適した環境が整っています。 

　ライムストーンコースト地域の石灰岩地層の一部は、テラロッサと呼ばれる土壌を形成し、ワイン用のブドウ栽培に適していることで知られています。畜産関係者は、この豊かな土地を利用し、アルファルファ、ライ、チコリといった栄養価の高い青々とした牧草を育て、牛に与えています。

　オーストラリア北部の牛たちが一般的に枯れ草を与えられるのに対し、南部のこの地域の牛たちは新鮮で栄養豊富な牧草を食べることができ、これが最終的に肉質に良い影響を与えていると考えられています。 

起源: 石灰石とは、主に海洋生物の殻や骨などが堆積して形成された堆積岩から成り立っています。これらの海洋生物が死んだ後、その遺骸が海底に堆積し、長い年月をかけて圧縮されて石灰岩となります。

成分: 石灰石は主に炭酸カルシウム（CaCO₃）で構成されており、アルカリ性の土壌です。この土壌は、水はけが良く、根が深くまで伸びることを促進します。また、ミネラルが豊富です。ワインに複雑な風味をもたらすことでも有名です。

土壌の特徴: ライムストーンコースト地域の土壌は、元々の石灰岩からの成分を保持しつつ、鉄分が豊富に含まれています。この土壌は、粘土質でありながらも、排水性が高く、植物の根が深く伸びることを助けるため、植物にストレスを与えつつも、必要な水分を供給します。牛たちは石灰石土壌特有のミネラル感や鮮やかな酸味を持つ牧草を食べていると考えられています。 

　19世紀末ごろから南オーストラリアの気候や土壌がワイン用のブドウに適していることが分かり、イギリスから移住してきたドイツ系移民が中心となり、畑を開拓しました。特にバロッサバレーのシラーズ、クナワラのカベルネ・ソーヴィニョンは有名です。

　主な南オーストラリアのワイナリーを紹介します。

1. バロッサ・ヴァレー（Barossa Valley）

• 特徴: オーストラリアでも最も古くからあるワイン産地の一つです。濃厚でフルボディの赤ワインが特徴で、熟成ポテンシャルが高いです。スパイスや黒系果実の風味が豊かで、力強い味わいのワインが多いです。

• 主な品種: シラーズ

2. クナワラ（Coonawarra）

• 特徴: テラロッサ土壌で有名な地域で、カベルネ・ソーヴィニヨンの生産で世界的に知られています。ブラックカラントやチェリーの風味、しっかりとした酸味、複雑なタンニン構造を持つワインが特徴です。この地域のワインは長期熟成に適しており、時間と共に味わいが深まります。

• 主な品種: カベルネ・ソーヴィニヨン

　その他では、エデン・ヴァレー（Eden Valley）、マクラーレン・ヴェール（McLaren Vale）、クレア・ヴァレー（Clare Valley）、アデレード・ヒルズ（Adelaide Hills）、ラングホーン・クリーク（Langhorne Creek）、リヴァーランド（Riverland）、カンガルー島（Kangaroo Island）が有名です。

　南オーストラリア州は、これらの多様な地域とその特徴を生かして、さまざまなスタイルのワインを生産しています。それぞれの地域が持つ独自の気候や土壌が、ワインに個性を与え、世界中のワイン愛好家から高く評価されています。

　ライムストーンコースト・ブラック・アンガスで使われる牛はこれらの地域で放牧され、ライムストーンコースト地域にある穀物肥育場で仕上げられた牛を使っています。ワインのようなストーリー性を持ち、複雑な味わいを楽しめるのがこのブランドの特徴です。